感触

感触というのは意外と大事なものだと思う。
例えば、神無さんの毛並みも、その日の健康状態によって違ったりする。
食肉の善し悪しを計るのにも触った感触だしね。
そしてなにより、感触で重要なものは力加減であると思う。
例えば、ゴム手袋をした状態で卵を握ってみると、簡単に砕けてしまう。
細かな感触や汚れ、熱量ももまた皮膚を通してしか感じ取れない。
感触は有能なセンサーでもあるのだ。
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ところでそれ以上に、空気の感触を味わったことがあるだろうか?
手応えというか、なんというか。
麻雀をやっているときの相手の当たり牌を捨てたとき、
重要な会話中の人の話の腰を折ったとき、
親密な二人の会話に割り込んだとき、
致命的ななにかに踏み出すときに、空気はまるで質量が増したかのように、
重く、絡みつく。何なのだろうね、この感覚は。
それは危機感ともいえるのかもしれないし、
領域に展開される壁ともいえる。見えないけど、そこにある壁。
なんなのだろう。
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その壁に触れる際に重要になるのはやはり力加減。
力任せにその領域に触れたなら、諍いが起こり、
柔らかな力を持てば、調和が生まれる。
水面に広がる波紋のように、それは確かに存在している。