移動と昇進とか仕事の話

「イチキサンは、移動したいんだよね?」
「いや、僕は半永久的にこの店で働くのかと思っていましたが?」
「そんなことあるはずがないだろう、システム的に。総B長にもばれたし」
「冗談ですよ、わかってますって。でも総Bが来たのって10月とかですよね」
「まあ、そうだな」「どうせ、国立のIさんと交換とかでしょ?」
「・・・誰から聞いた?」「・・・勘ですけど、やっぱりそうなんですね」
「まあ、でもいつになるかわからんしな」
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「ところで、店長?」「あん?なに?」「店長になってよかったことってなんすか?」
「・・・」「・・・聞いた僕が馬鹿でした。まあ、そんなもんですよね。」
「いや、色々あるぞ。好きなときに出勤できるし」「9時から0時とかw」
「好きなだけ食事が出来るし」「廃棄の餃子っすね」
「手当てもつくし」「総額は社員と同等以下じゃないっすか、残業代もつかんし」
「・・・好き勝手できる」「・・・監査の眼に怯えながら」
「踏んだり蹴ったりだな」「ですね」「まあ、いいじゃん。店長になれば」
「なれますかね?真面目な話、店長になれますか?」
「なれる。オペレーションは問題ない。ただそれ以外の部分が弱いな。」
「ほう?」「QSCMのQSの部分、オペレーションは問題はない。だけど、
Cは先輩よりも劣るってわかってるだろ?」「まあ、正直やってないっすね。最近」
「そこを、汚れ仕事をやんないとみんなついてこないぞ」
「店長もいってるほどやっていないと思いますが承知しました。」
「Mは教えればすぐにできそうだけど、いわれないとやんないのじゃ駄目だ」
「わかります。」「じゃあ、日持ち基準」
「どうでもいいっすよ、うちの在庫回転率じゃどうしても廃棄ロスにならないし」
「どうでもいいじゃねーよ。そういうところが駄目なんだよ」
・・・言われてみれば僕は暗記科目はどうも嫌いだ。
「努力します。」「じゃ、とりあえずあそこの掃除と単語系を抑えとけ」「はい」
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「でも、うちの会社のシステム改良してるじゃん?」
「そんなんいわれても店長会議に出席しないときけないっす」
「いや、そうだけど、お前、やけに詳しいじゃん」
「色々です。勘と推論と断片的な情報でわかりますがな」
「店長もランクによって給料かわるみたいよ」「また管理費がかかりそうな」
「でも、苦しいよな」「出来ちゃった結婚・・・」「うるせーよw」
「車ぶつけたり」「あれはまじありえねーって、保険もきかねーし」
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「ところでほそぴーその後変わりました?」
「ああ、変わった変わった。お前の盛り付けはいって以来な」
先週の土曜日にピークの盛り付けに新入社員を入れて、罵倒したからだ。
「がっかりだ」「今まで何をしてきた」「盛り付けが違う、遅い」
「そんなものお客様に出せるか、捨てて来い」「引っ込め、邪魔だ」
「マニュアルも勉強しないで、定時上がりか?」「・・・もういい、帰れ」
と、罵りまくった。これは社員間で計画してのこと。
新入社員君は勉強をしている気配がないので、ここで引き締めるために。
「・・・ほそぴー、がっかりだ。君には失望した」
「すみません」「この一ヶ月、お前は何してきたんだ?」
「はい」「まあ、いい。これで自分に何が足りないかわかっただろう。」
「・・・はい、すみません」
「君は定時に上がるな?そんなことでいつ勉強するんだ?誰も教えてくれんぞ。
残って、自分で勉強して、自分で聞くしかないんだぞ?わかってるのか?」
耳に痛い話だ。自分にとっても。その意味で、この子はひどく役に立つ。
・・・「で、居残って勉強してますね。最近」「でも、大変なのはここからだろ」
「そうですね。いつまで保つかなー?」「だな」
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「中間?」バイトの学生が事務所で勉強しているので話しかけてみた。
「数学Ⅱは全然役にたたないんだよね。実際」「数Ⅰは役に立つんですか?」
「たつさ。損益分岐とか標準偏差とかその辺までだけどな。物理系は数学必須」
「何ですか?それ」「うん、では高校生の君に勉強の意味を教えてあげよう」
市来講義の開講です。話が長いので割愛。
「・・・というわけで、数字は目標設定と現象の分析に使われているのさ」
「・・・講演会を開けますよ、それ」
「君は将来なにになりたいのかな?」「何でしょうね?」
「いいかい、将来というのはもう身近まで迫っているのだよ。
大前提:自分のやりたい事がある。中前提:自分のやりたいことに向いている。
小前提:自分のやりたい事が出来る場がある。この三つを抑えるために大学に行け」
「・・・語学系の大学ってどんなもんでしょう?」「うん、どうして?」
「国際的な仕事をしたいなぁーって」
「ああ、なら英語を勉強しな。国際ビジネスの標準はほぼ全て英語だから。」
アラビア語とかは?」
「そういうのは、その国の文化とかを調べるのに使うから
ビジネスというか研究の分野だと思うが?」
「英語ですかー」
「ああ、英語だ。例えば、君が英語を勉強したとしよう。
だが、英語を喋れる奴はゴロゴロいる。だから喋れるだけでは駄目で+αが必要になる」
「例えばなんでしょう?」
「通訳の場合で言えば、専門分野の知識だな。ビジネス、商法、メディア色々だ。
例えばビジネスで言えば、その業界全体を把握した上での翻訳が必要になる。
君の翻訳いかんによってビジネスの成否を決定するからニュアンスが重要になる。
このニュアンス、微妙な部分をつかむために業界に通じてなければいけない。
つまり直訳ではなく相手の意思を含めた業界全体に通じて訳す必要があるわけだ。」
「なるほど」「今のうちに何をしたいか決めてから大学を選べ。
僕はそのことに気付くのが遅すぎた。大学の4年を無駄非効率にに過ごすぞ」
「イチキサンはさんでこの仕事を」「色々だ。」「色々ですか」
この後の話も長いので割愛。
なにを偉そうに語っているのだろうね、僕は。
未来のある少年が、自分で選ぶ道を決めるきっかけになればいいのだけど。
そういう僕はどうしたものだろう。
本当に店長になるのだろうか?なる資格があるのだろうか?
店長にはなれるだろうと思う。でも、いい店長になれるだろうか?
そこが問題だ。