今、僕は初めて恋というものの厄介さを身をもって実感している。
それはあくまで客観的な視点で、完全な第三者で、でもその係累の延長線上にいる。
恋は盲目であり、その盲人が突き進む先が崖であっても、見てる僕達が慄いても、
きっと件の彼は話をきかないだろう。そんな彼に言えることはひとつ。
「馬鹿だね」でも、それはひどく羨ましく思えるし、かつてそうであった僕は、
思い出を掘り出してみては、あの頃の気持ちを偲んでみる。
でも、あの頃の自分の気持ちがもう思い出せないのはどうしてだろうね?
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アルバイトが初めての彼女に現を抜かしていることが知れ渡り、
時に風邪と称して、仕事を放棄し、シフトをすっぽかし、もうだめなんだなぁ、
道を外れてしまうほど恋に溺れてるのだなぁ、若さだぁと休憩時間に話題に上る頃、
事件は起こった。・・・まあ、今日なんだけどね。
「市来さ〜ん」「なんだい、○○みー」「奴から呼び出し喰らった」
「はぁ?なんで?麻雀?」「いや、違くて、奴に彼女出来たじゃないっすか」
「ああ、いちゃいちゃしてるねぇ」
「俺と奴、ここで一回も話してないっすもん」「いや、知らんけど。で?」
「で・・・」
・・・件の彼と彼女が出会う前、○○みーはその彼女とセフレだったという。
「でも、一回だけだし〜、夏が俺を呼んでたんすよー」
「っていうか、君は関係ないね」「そっすよ、何を今更・・・」
「いま何にもないんだろ?関係ないよ」「とりあえずいってきま〜す」
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「だってさ、渡辺さん」「はぁ、まじありえなくね?」
「ありえないね、とんだ災難だ。ということはやつの代わりに俺が出るのか?」
「ジムいけないっすね」「うん、今月と来月のシフトが素敵なことになりそうだ♪」
「切れそうなんだけど」「なんで、君が?それこそ関係ナッシング」
「じゃなくて、自分の行動がどういうことになるか考えてないから」
「まあね、割を食うのは俺とすずっきーだからいいけど、新入社員もくるしな」
「大変っすね」「そんなもんだ」がちゃん、「お、おかえり〜どうだった?」
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「やつ、辞めるらしいっすよ」「なんで?」
「いや、俺も直接聞いてないんで」「はん?どういうこと?呼び出されたんだろ?」
「彼女が来て、『あの時、どんな気持ちだった?』とか聞かれて」
「そんなんやりたい気持ちだろ?」
「そうなんすけど、適当にあの時は気持ちがあったってこたえました」
「・・・それは逆効果な気がする、むしろ複雑化してないか?」
「ふ〜ん、やらなきゃよかった。まじめんどくせえ」
「うん?ということはやつは何処にいるの?」
「コンビニっす」「いってこよー」「ちょっ、まじやめてくださいよ!?」
「だいじょぶだって」
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「おう、なにしてん?」やつは座り込んで貧乏ゆすりをしている。傍らに彼女。
「お、ひさしぶりっす」・・・この前やめたTまでいるのか。
「久しぶり、どこでバイトしてるの?」「あそこのLPガソリンスタンドで・・・」
話していると後ろから○○と渡辺さんも出てきた。
「あ、どっかいった。おーい」彼女と場を去る奴を見送ってコンビニに行く。
「どちらにせよけじめはつけろよ。時間が必要なら俺が代わりにでるから
店長に事の顛末をちゃんと話せ。Tとお前をかわいがってたから、凹むだろ。」
とメールを送った。返事はない。来ないだろうね。
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ふん、色恋沙汰は何も残らん。のめり込むと特にな。
楽しいのはいまだけで、未来という可能性を食いつぶしているに過ぎん。
身をもって、経験した僕がいうのだから間違いない。
周囲に迷惑をかけない程度に、慎ましくやって欲しいものだ。
さあ、ゴールデンウィークも始まって、忙しくなるな。
奴はなんだかんだで昼の主要メンバーだったから、大変だ。
なので、この日記はきっと不定期なものになるだろう。
ジムにもいけない。ああ、残念だね。とても残念だ。