朝食+理由+涙+本当

「ひろ」寝ているところを呼び起こされる。
今日はボーリングで帰宅が6時半、起こされたのは10時。
「目覚ましが十二時半に振動するからそれまで寝る」
僕の睡眠時間は決まっていて、それより少しでも足りないと、
またその時間分寝ないと一日の体調が悪い。
中途半端な時間経過の途中に起こされて機嫌が悪いと逆切れされる。
起こすなよ。っていうか、意識ないんだからそんな返答を真に受けるなよ。
起きてみたら朝食が鍋とオマール蝦のペシャメルソースという意味不明な組合せ。
「寝起きでこれはきついのですけど。僕は昼食もようよう食わんのですが」
「私達ばっかり旅行行ったり、おいしいものばかり食べてるから」
ああ、そうですね。イタリア行ったり、フランス行ったり、熱海に行ったり、
楽しそうですね。旅行行き過ぎじゃない?
それに僕はガストロノミーを尽くす気分ではないのです。
といいつつ食べましたけど。スティーブンキングのホラー映画を見ながら。
鍋は海鮮、中身は蝦、蟹、ベビーホタテ、鱈、春菊、白菜、・・・高野豆腐!?
「これは明らかに冷蔵庫の残り物だよね?」
「美味しいからいいでしょう」あんま鍋にして食べたことないからなんとも。
「ところで福岡にはいつからいくの」
「金曜から」「そう、彼女はあってくれるのね?」
「じゃなかったら行く理由がない」「御土産とか買わなくてもいいの?」
・・・微妙に花とか買ってみようかと思ったけどやめたのはいわない。
「いいんじゃない。」「あ、そう。向こうで美味しいものでも食べてきなさい」
そんな朝食。で、結局、僕は5時まで寝ることになる。
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仕事帰り、コンビニに停車しているカップルの女性が泣いていた。
それを見て、何かを思い出して、なんなのかを考えてみた。
「君は泣き虫だな」そんなの関係ないだろう。
「一杯泣くといい」なんでさ?
「大人になると泣きたいのに泣けない時がやってくる」自分も大人じゃないだろ。
「今のうちに泣いとけ。そうやって感情に任せられるのも本当にいまのうちだけさ」
大人といわれる年齢を重ねたいま、確かにそう思う。
でも、これは誰だったろう。また記憶が曖昧で、誰かを忘れているのだろうか。
本や映画とか自分に関係ないことには泣くけれど、
自分の運命に対して泣くことは本当になくなった。
彼女と別れて3ヶ月してようやく一回泣いただけで、
その前も18のときにYMCAを辞めて以来か。本当の感情を忘れてしまいそうだ。
もともと、無感動な人だったけど、大人になるとそれに拍車がかかる。
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「あなたが気づかせた恋があなたなしで育ってゆく」
「だから僕は君を忘れてやる。たとえもう君が別にそんなことどうでも良くても」
「今春が来て君はきれいになった。去年よりずっときれいになった。」
それはどんなに悲しくて辛いことだろう。
愛するあなたが僕といたときよりも輝いていたなら、僕はどんなに傷つくだろう。
そこに僕がいないことにどんなに嫉妬するだろう。
いつだかの質問の答え。「嫉妬しないの?」
ああ、するさ。僕以外の誰かが君を幸せにするならば、嫉妬する。
そして後悔する。自分の無力に、不甲斐なさに、欠陥を、不足を、全てを呪う。
ああ、だから僕は怖いのだ。彼女と会うのが怖いのだ。
僕がいなくても彼女は幸せだと知るのが怖いのだ。
僕なんかいなくても彼女は十分に笑っていられると知るのが怖いのだ。
捨てられるのが、お前なんかいらないといわれるのが怖い。