朱色が差し込む時間の後、待ち望むときがやってくる。
空を見ては透かし見える星の瞬き、月は囁く。
木々はざわめき、野良猫は欠伸する。
夜に踊れや、宴を笑えや、春を讃えや。
冬は終わり、春の訪れ、空は崩れて、雨降らす。
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昨日は恥をかいた。己の怠惰を恥じた。初心に帰れ。
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前から気になっていた寿司屋に行った。名を江戸一という小さな店。
渡辺君と二人で行ったら、僕らが最後の客だったらしい。
店主と若い板前がTVを見ていた。失敗したかなと一瞬思った。
席について、1000円のコースと1400円のコースを頼む。
TVを見ていると件のライブドアの報道がされていた。
すると板前が話しかけてきた。「あんたら若い人はあれをどう見る?」
エンロンの模倣ですね。二番煎じだ。下らない」
どうやらそういうことを聞いていたのではないらしい。
「私ら年寄りにはああいう、濡れ手に粟って言うのかITの商売が理解できない」
金本位制から移行して以来、実体がない経済になってますからね。
バブルのように、実体がないから膨れ続ける。」
「そう、そうなんだよ。私らの時代では考えられないことが起こっている。」
そうやって、僕らは実態のある、もの造りの大切さについて話し合った。
子供のしつけが出来ない最悪の親はバブルを経験した40代だとか、
徳川幕府はなぜ続いたのか、世代交代で起こる会社の崩壊は何故起こるのか、
ホリエモンは駄目で村上や三木谷が成功したのはサラリーマンを理解し、
政財界にコネがあったからだとか、戦後の集団就職後、
やる気があった奴が板前を辞めて、中途半端な奴が続くのは、
最初から希望を持っていないからだとか、26で店を構えたが、
13から板前を続けたから早くはなかったとか、彼の最後の弟子について話した。
「政治家は要らないと私は思うのだよ」そんなこともいっていた。
色々思ったが、一番印象に残ったのは彼は主で、僕は雇われだということ。
彼は自分の店を、自分の信念を持って守っている。
僕はあの店をどうしただろう?
「君も、自分が店長になってどうしようとか思っているだろう?」
遠くない未来、僕は僕の受け持つ店をどうできるだろう?
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ところで、コースを食べたのだけど、シャリが酷く美味しかった。
ねたは閉店間際ということもあり、残念だったけど、
それでもいいねたを使っているとわかるほどのものだ。
「その白蝦とホタテをください。」そういって、白蝦を4貫、ホタテを2貫、
おまけにホタテの紐とキモをサービスしてもらった。
会計ということで、渡辺さんの分も払うと5600円だった。
一瞬時が止まったが、コース合計で2400円。うん?
差額の2200円は白蝦とホタテか。やるな。1貫400円くらいか。
でも、よくよく考えるとそんなものだろうと思った。
ホタテなんて1枚丸ごと使ってくれたわけだし、100円寿司とはわけが違う。
全体的には満足だったけど、吃驚した。