代替:自動車の構造変化

i-podが携帯プレイヤーの基盤を覆し、磐石と思われたSONYは失墜した。
このようなことはよくある。デファクトスタンダードを作っていた会社が、
ある日、別系統の技術の登場で技術開発に乗り遅れ、市場から撤退する。
要因は様々だが、大体は「固着・固執」で説明できるだろう。
そのような現象が様々な市場で起ころうとしている。
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自動車。初期の自動車の開発には水力、火力、電力、風力、磁力など様々な動力源が
思考されていた。ワットが蒸気機関車を開発した4年後には蒸気機関の3輪車が
開発されたが市場に投入されるほどの完成度はなかった。その100年後に、
「自動車の父」と呼ばれるゴッドリープ・ダイムラー
カール・ベンツ、二人のドイツ人がガソリンエンジンの実用化を実現したのだ。
1801年にはフランスの科学者であるフィリップ・レボンが蒸気機関に代替される
ガソリンエンジンの基礎理論を完成させていたが殺害されてしまったため、
50年ほどの潜伏期の後にルノアールの手によって、
ついにガスを使った実用的な内燃機関が現実味を持って動き始めた。
ルノアルールの考えた機関は、フィリップレ・レボンの考案した要素を
まとめあげたもので1862年にはフランス人ロシャによって、
内燃機関で効率を上げるための理論的考察され、
1876年にはドイツ人オットーが4サイクルエンジンを作り上げている。
このオットーの4サイクル機関はルノアールが考えた機関に比べ効率が数倍向上し、
また非常に静かだったためサイレント機関とも呼ばれた。
この4サイクルエンジンは今でも使われており、
現代自動車の基礎がようやく形を見せはじめたと言える。
現代の自動車の基盤はガソリンエンジンが基になっているのだ。
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「加速がすごい。石油を産出しない日本にはうってつけだ」。
慶応大のプロジェクトチームが製作した8輪駆動の電気自動車
「エリーカ」に試乗した首相は、興奮気味に語った。
首相の意向をくみ、内閣官房では施政方針演説でも電気自動車に言及して、
低公害車の重要な選択肢に据える方針を打ち出すことを検討している。
水素を用いる燃料電池車実用化に熱心だった米ゼネラル・モーターズGM
が経営不振に陥り、2020年代を目標にした燃料電池車普及が不透明になりつつある。
一方、携帯電話の技術革新で、電気自動車にも使われるリチウムイオン電池
性能向上と小型化が進んできたからだ。
一方で業界は困惑気味。
ハイブリッド車普及に力を入れるトヨタ自動車奥田碩会長は官邸で記者団に
「まあ、(首相が)いろんなものに乗るのはいいんじゃない。
電気自動車は重たいし充電しないといけないから難しい。
トヨタ本体としては『やるだけやって下さい』という感じだ」
石油危機のあった70年代から各社は多額の研究開発費を電気自動車に投じたが、
電池が高価で走行距離も短く、量産化を断念した経緯があるからだ。
構造的な問題もある。電気自動車は車輪内に設置したインホイールモーターで
車輪を回転させるため、エンジンが不要になる。
「エンジンのすそ野は部品メーカーを含めて広い。
エンジンをなくす方向での急激な技術進化には積極的にはなれない」
・・・電気自動車はきっといまの自動車産業界にとって悪夢以外の何者でもない。
いままで蓄積された知識が向こうになる可能性があり、
設計もいくつもの擦りあわせ部品を用いたものではなく、
規格化された数点の部品を繋ぎ合わせるPCのようなものに変わる可能性がある。
もしそうなれば、人海戦術の得意な中国やインド、韓国に負けてしまう。
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現在の段階で電気自動車、燃料電池自動車の実用化、普及が遅れているのは、
バッテリーが高価なこと、重量が重いこと、充電時間など様々な制約があるからだ。
しかし、それらの問題は徐々に解消されつつある。
たとえば、電気を一瞬で充電することが出来る電池の開発が進められ、
貴金属ではなくプラスチックを利用した擬似金属(この言い方でよいのかな?)
そして小型化が日々進められているからだ。
どちらかといえば、電気自動車の問題は車屋ではなく電気屋の問題である。
また、電気を利用した場合、そのロスがどの程度発生するかも考慮すべきかな。
ソーラーカーがあの辺鄙な形をしているのも、それが理由だ。
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それよりももっと深刻なのが産業構造である。
自動車がガソリンを軸にエンジンや変速機などが設計されえている。
そのため、仮にガソリンを使用しない移動体を開発したら、
どのようなことが起こるだろうか?
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各国の自動車メーカが燃料電池自動車の開発を競い合っているのをよそに、
ちょっと変わったクルマが実用化された。その名はAir-Powered Car、
圧縮空気エンジン自動車である。実証実験などではなく、実車として販売されている。
圧縮空気エンジン自動車の商品名は[CityC.A.T.]。
ミニバン、ピックアップ、カーゴバン、タクシーと車種も揃っている。
アナウンスによれば、有害な排ガスがゼロであるばかりでなく、経済性も極めて高い。 CityC.A.T.を開発したのは、ルクセンブルクに本拠地を置くMotor Development International(MDI)社である。ちなみに、MDI社は技術者であるギ・ネグレ氏によって
1991年に発足した新興メーカだ。
性能はというと、最高時速110キロ、1回の圧縮空気注入で300キロメートルの
走行が可能であり、価格もミニバンで約1万ユーロ(約115万円)だという。
燃料が圧縮空気だから、排気も空気だけであり、クリーンの極限と言える。
普及するには圧縮空気スタンドのようなインフラが必要になると思われるが、
その場合は2〜3分で充填できるという。空気を圧縮するだけなので、
自分でコンプレッサを使って「燃料を作る」こともできる。
搭載されたコンプレッサ(5.5kw/220V)を使用した場合は2〜3時間で完了する。
これで300kmも走ることができるとすれば、経済性は極めて高い。
因みに、電力料金に換算した100キロメートル走行当たりのコストは
約0.75ユーロ(約90円)になるという。
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現代の自動車はエネルギーを内部に蓄積する構造をとっているが、
発電機などは外からの磁力によって回転をしている。
では、例えば、電車のように道路にコイルを敷設すれば、
接触で充電しながら車を走らすことが可能なのではないだろうか?
また、圧縮空気自動車のように、電気を直接消費するのではなく、
別のものを媒介にする事で、より効率的な運動エネルギーを得られるように思う。
例えば、太陽電池と電気自動車、燃料電池を組み合わせるとどうだろうか?
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なんにせよ、自動車の産業構造は大きく変わるのかもしれない。
そうなると、膨大なインフラ整備が必要になるのだろうか?
いままで蓄積された知識は失われるのか?
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枯れた技術の水平思考」・・・任天堂のDSが大ヒットを飛ばしている。
既存の一般の産業では使い物にならなくなったような技術を集約化して、
安価な製品を作るという思想である。
確かに代替された知識の集約は単体では役に立たない価値のないものになるだろう。
しかし、知識をいくつも纏め上げて、新しい価値を生み出すことも可能である。
むしろ、人類の技術はそうやって進歩してきた。
自動車開発の技術は様々な分野に応用され使われている。
また、同様に様々な技術が応用され、自動車があるのだ。
そういった知識の相互連鎖があって、自動車は日本の最重要産業になっている。
色々やってみるのがいいのではないかな。

参考文献:http://tenshoku.inte.co.jp/saishin/gyokai/3/em_dko14/
     http://www.oldcar-navi.com/
     http://www.asahi.com/business/update/0109/028.html
     http://waterplanet.homeunix.net/~ohno/car-history/car-history101.html