初雪/行き場なく

「今日、雪が降る」道行く女子高生がそういっていた。
そういえば、この時期、東京で過ごすのは初めてかもしれない。
彼女の言葉どおり今日は雪が降った。
頼りなさげに、ふわりふわりと雪が漆黒の中を漂う。
色は白く、頬に触れると雫となって流れ落ちる。
「雪ですよ、ホラ」そういって隣ではしゃぐ声が聞こえる。
「・・・雪だね」そう呟いて仕事場に戻る。
まだ彼女は仕事に戻らないけど、こんな日ぐらいはいいか。
雪が降ると、終わりが近づいている気がしてくる。
散り行く雪のように儚く消えていく。
行き場をなくした雪は、ただ大地の上で失はれるだけ。
僕も雪のように消えてしまうのだろうか。
それもいいやと思った。生きるには辛いことが多すぎる。
いつだって確かなことだけを求めているのに、
足取りは不安定でゆらりゆらりとこちらとあちらで行き来する。
変わる想い、変わらない思い出。後ろ向きで歩く日々。前にある未来。
行き場をなくした雪のように僕の心もやがては解ける。
雪の結晶はまるで過去。美しく整って、あまりにも白い。
掴もうとすればそれは解けて消えてしまう。失はれた日々の如く。
雪に焦がれても、得ることは叶わない。
この想いは行き場をなくしてどこにいくのだろう?