落陽

車から眺める夕日はなんて美しいのだろう。
運転でもしない限り、太陽をまじまじと見ることもなく、
坂道を登れば視界が広がり、空に飛べるような錯覚に陥る。
紅く燃える太陽の色は、まるで線香花火のよう。
その赤を見て、遠くで燃えるその巨大な陽に想いを馳せる。
同じように帰り道。
空では月が相も変わらず哂っている。
道路を走る車のライトは、4時だというのに未だに賑やかで、
こんなにも眠らない人々がいるのかと驚いた。
環八はこの時間も渋滞している。
白バイの隊列も、パトカーに捕まるスクーターも、
車と事故って破片と脳漿を撒き散らして輝く人も、
循環している。
ふと、楽しかった日を思い返してみれば、酷く切なくなる。
楽しき日々は何故にこんなにも心を締め付けるのだろう。
薄れていく顔、ぼやけていく記憶、擦れていく声。
願っても記憶はやはり失われていく。
ただ、悲しみの残り滓だけを残して。
この心に残った暖かい灯も、いつかは消えてなくなるのだろう。
燃え尽きたそこに、何が残るのか。
陽は今日も昇り、また沈む。繰り返し、繰り返し・・・。