目が醒める。また変な夢を見た。
断片的なシーンの繰り返し、物語は繋がっていない。
記憶にある最初のシーンは、太腿の付け根付近から血を流す。
ああ、包丁で刺したのだなぁとなんとなく思った。
誰が刺したのか、自分で刺したのか、それとも誰も刺していないのか。
そこに昔から変な形の痣があるから、それを取り除こうとしたのかもしれない。
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ルイ・ヴィトンの小型バックを拾う。
女物で変だなぁと思いながらもポケットがなかったので、その中に財布を入れる。
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風呂に入っていて不意に潜ってみたくなった。
潜ると思いのほか深く、海の底へと繋がっていた。
水面を見ながら徐々に沈んでいく身体。
辺り一面には海の底から海面に向けて浮かぶ気泡が踊っている。
ああ、きっと、これが海に降る雪なのだと思った。
地上の雪も上下左右の宇宙に関係なく舞うけれど、
海の雪は何処にいくわけでもなく闇に漂う。この子らは卵なのだ。
海の底にある珊瑚礁を見ようと、向きかえると底には一面の闇しかなかった。
海面から降り注ぐ光は海の底まで届かない。
海底にある闇は海の外まで飲み込まない。
僕が漂っているここが境界線。
不思議と息苦しくなく、いつまでも母親の胎にいるように丸まっていると、
大英化学博物館にいた鯨が目の前を横切る。
・・・リヴァイアサン
「彼のものは慄きを知らぬものとして造られる。
驕り高ぶるもの全てを見下し、誇り高い獣全ての上に君臨する。
審判の日、獣は全ての罪深き人々を飲み込んで、赦された人々の供物となる。」
随分と昔に読んだ本にそう書いてあった。彼女の鰭は闇を発するのだっけ。
その代わりに、彼女の通る後には光の道筋が残る。
「・・・それで、僕を飲み込みにきたのかな?」
それも仕様がないとなんとなく思った。
例えば、僕の言葉があなたに届かないのなら、
僕はあなたの存在を信じないといつも言っていたから。
神様は居るのかな?
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目が醒める。よくわからない夢だったなぁ。夢らしい夢ならばいいのだけど。
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仕事を終えて、事務室で帳票類を整理していると、
バイトの渡辺君がとつとつと事の顛末を話し始める。
先週一週間、彼はバイトを休んでいて、原因は1週間何も食べなかったから。
そして、よく眠らなかったからで、この二つの行動の原因は彼女に振られたこと。
よくよく似たような行動をするなぁ。恋は人を可笑しくするのだろうね。
「もう、女がよくわからないわ」それは同感。
二人でクリスマスがいかに憎いかを語り合って、忘年会の話になり、
スノーボードに誘われ、酒を飲もうと話、彼の別れ話を聞く。
きっと、本当に好きだったのだろう。