音楽

昨日、スターバックスに向かう途中にHMVによった。
「欲しいCDがあるから」そういってレミオロメンの粉雪と
ACIDMANの季節の灯を試聴する。
耳に押し当てて、音楽の世界に浸るのは久しぶりで、心に響く。
昔はイヤホンを通してしか音楽を聴かなかった。
周囲の雑踏が嫌いで、声や雑音が腹立たしくて、
当時の僕は、間違いなくこの世界を憎んでいた。
憎んで、蔑んで、罵って、絶望して、疑って、たくさんを傷つけた。
だから口笛を吹くか、ウォークマンを聞いて自分の世界に閉じ篭った。
何も傷つけないように、傷つかないように。
でも、汚れていたのは自分自身だったのかもしれない。
心が澄むこともなく、音量ばかりが大きくなって、音に没頭するようになった。
音楽に依存していた。美しいリズム、澄んだ歌声、切ない詩。
世界は音で満たされた。やがて眼に映るもの全てが灰色に見えて、
音を聞くときだけ、世界は色を取り戻した。
聞いている音楽によって、同じ場所なのに空気が変わるのは不思議だった。
音が心に影響しているのか、心が音に影響しているのか。
だから、自然を見つけては色々な音を聞いた。
心臓の鼓動、風の音、虫の声、水のせせらぎ、木々のざわめき、
それらに混じって流れる旋律は一つの流れ。
心の欠片を補ってくれるような、そんな気分になる。
昔から漠然と感じてきたもの。心の空白を満たしてくれるなにか。
それは具体的なこともあれば漠然としたもののこともある。
時によってそれは失われたり、得られたりする。
いつもそれがなんなのか求める、この喪失感を満たしてくれるなにかを。
だから形のない音は心にあわせて歪む。
時に心の歪みを音に変えて外に向けて吐き出す。
言葉で表現できないそれを、音に変えて、吐き出す。
心が音に変わって、世界に響けばいい。