道すがら

今日も歩いて帰る。
もう、何度もきた道なので、白昼夢(夜なのか?)を見ることも少なくなった。
ただ、今までと違うことは、今日は雨が降っていたということ。
雨が好き。
全てを洗い流してくれる優しい霧雨と、少し湿った空気が心を弾ませる。
雨の日に空を見上げると、幾千、幾万もの水滴が空から降ってくる。
それをぼんやり眺めるだけで、心にある澱が抜けていくような錯覚に陥る。
「あなたは今日も泣いているのですね。」と呟いて、
口笛を吹きながら雨の夜道を散歩する。
夜空に響き渡る笛は、湿った空気を震わせて、いつもと違う音を奏でる。
悲しげで、張り詰めて、澄み切って・・・切ない音。
何処かで聞いたような、心から湧き出るメロディを吹く。
空は誰のために泣いているのだろうと思った。
そんな道すがら、なーという声に惹かれていくと一匹の子猫がいた。
雨に打たれてびしょぬれ姿、周りに親猫は居ない。
「君は死んでしまうの?」と呟く。
周囲を見渡して、近くにあったダンボールとビニールで簡易な箱を作る。
抱きかかえた子猫は頼りなく、それでも確かな暖かさをもっていた。
「そう・・・生きてるんだね」と少し驚いた。
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