道徳

今日、警察官と話をした。
別になにかをしたわけでも巻き込まれたわけでもなく、
ただ、そこに彼が居て、自転車の違法駐車を取り締まっていたから、
「あそこの違法駐車している自動車は取り締まらないんですか?」と聞いた。
きっと、思うところがあったのだろう、彼は興奮気味にいった。
「あんたは前に取り締まられたのか?」
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それから二人、長い間話をした。
毎日、取り締まっていること。いくらやってもきりがないこと。
この道路をきつくしても、隣の道路に流れるだけだということ。
100円パーキングはがらがらで、結局止めたいところに止めること。
たとえ、チェックをしてもすぐに移動して、新しい車が停めること。
レッカー移動しても、置く場所がないこと。
それで作ったスペースにまた新しい車が来ること。
来年から民間委託されて状況が改善されればいいと彼は言っていた。
そんな僕たちの後ろをベルを鳴らして自転車が走っていった。
「自転車のベルって何でついているかしってるか?
緊急時にどうしても避けられない時に相手に知らせるためにある。
決して、相手をどかせるためについているわけじゃない。」
そうして、彼は電柱にある花を指差していった。
「自転車に轢かれて死んだ人だ。毎年、少しずつ増えている。」
「違法駐車をどかせば、警察に盗難届けに来る。
自分が悪いという意識がないんだ。
交通整理をすれば、信号を指差して赤だという奴。
走りを注意すれば食って掛かってくる奴も居る。
いま、なにかがおかしい。おかしいことが多すぎて、
どこから手を付ければいいのか分からないのが現状さ。」
そういう僕たちのそばを信号無視をして携帯をいじる自転車が走る。
「でもな、俺達がやらなかったら誰がやるんだ」そういって彼は笑った。
きっと彼のような人ばかりだったら、この社会は変わるのだろう。
「ご苦労様です」僕はそれ以外に何もいえなかった。
心が苦しくなる。自分が恥ずかしい、本当に。
いつから自分のことだけを考えてしまうようになったのだろう。
彼の言葉には重みがあった。
本当にこの問題に日々直面して、たくさん思うことがあるだろう。
現場で問題と戦っているものにしかない重みが。
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その後、家に帰ろうと車に乗った。甲州街道は今日も混んでいる。
右折をしようとすると、対向車線から飛び出してきた車とぶつかりそうになる。
その女の人は窓を開けて、「バーカ、死ねよ」といって走り去った。
僕は笑った。本当に可笑しい。心が貧しくなった気分だ。
本当にいつからこの国は正直者が馬鹿を見るようになったのだろう。
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「自転車は車道と歩道のどちらを走るべきなのでしょう?」
「本当は車道で、所によって標識がある。でも、自分の安全を考えるなら
歩道を走るしかない。歩道を走らせて貰っているんだという意識が大事だ」