夜明け前の夜

昨日に引き続き、今日も夜道を1時間半独りで歩きました。
町の街灯は明るすぎて、本当に夜なのか疑ってしまう。
人一人いない道を延々と歩くと世界に独り取り残された気分になる。
気分は冒険モノ、どこか不思議な世界に迷い込んでしまったかのよう。
空は黒く、永遠に夜明けはこない。
遠くのそらがぼんやり明るく、夜明けが近づいている。
でも、それは町を照らす電灯の光で、まだ夜は明けない。
世界がこのくらい人が少なくて薄暗ければいいのに。
空気は澄んでいて、辺りの雑踏もない。
静かで、安らかな夜。
昼間よりも、夜のほうが好きだ。
でも、これは本当の夜ではない。
本当の夜は、あの日、あの島で体験した。
月明かりだけの空、反射する海、他に明かりはない。
月が沈むと同時にあたりは完全な闇に沈む。
本当の夜、漆黒に塗られた世界。
神の住む世界だと思った。
だからこの夜は仮初の夜。
本当の意味での夜はまだ来ていないし、
本当の夜明けもまだ来ない。
雨がポツリポツリと頬を掠め、夜明けに追いつけないような感覚に襲われる。
でも、不思議と不安はない。
あちらには夜明けの太陽が、こちらは夜の夕闇が。
僕は迷わず夜を取る。
全てを隠し、隠れていたものが動き出すこの夜が好き。
町の明かりが優しく世界を照らす。
太陽は僕には強すぎる。
霧がでて、辺りには誰も居ない。
まるで、舞台のようで、自分が物語の主人公になったような気分になる。
永遠に続く今日を望んでる。
明日は今日の延長で、境なんて本当はないのにね。
だから本当の夜も朝もやってこないのだけど。
君とまた一緒に安らかに眠りたいな。