水と油

水と油、太陽と月、陰と陽、男と女・・・この世界は相対で溢れている。
これら相対するものは現と虚のように反発する。
でも、時としてほんの少しの条件で混ざり合うことがある。
例えば水と油。イタリア料理ではオリーブ油と湯を火にかけて乳化させる。
また、中性洗剤のような親水性と親油性のある中間財を用いて混ぜることもある。
・・・だから時として人もわかりあうことがあるのだろうと思う。
・・・たとえ理想論だとしても、理想論でも、そう思いたい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
下北沢で飲んだ夜、先輩と話をした。
「・・・結局、女はよくわからない」
「そういう風に考えるならば、心の壁なんてのは要らないのかもな」
「でもですね、人間の脳が証明するように完全に分かり合っても一緒なんですよ」
「どういうことだ?」
「人は左脳と右脳とで別々の意識を持っています。
でも、個体としての自我はひとつでしょう?ここから導き出されることは、
二人の人が完全に同化しても、新しい独りの人が生まれるだけです。
A+B=ABではなくA+B=Cってわけですね。」
「ならば、独りでも生きていける力があるといい。お前はそれをもってるのか?」
「いいえ。持っていないし、そんな強さは望まない。それこそ真の孤独だから」
「結局、分かり合うことはできないのか」
「かも知れないし、そうでないかもしれない。どちらも同じことさね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
君からの言葉、確かに受け取りました。