いい男になる決意

さてはて、何も感じないし、何も思わなくなった。
お腹もすかないし、楽しくないし、寝ても寝なくてもいい。
熱くてもどうでもいいから火傷が増えたし、
痛くても、それで?と思うようになった。
楽しくないよね、そんな生き方。つまらないなぁ。
そういえば、携帯電話をみなくなった。
仕事の電話が掛かるから持ってるけど、仕事以外は基本的に
車の中に放置している。
いま、本当に必要としている人からのメールは来ないから、
それだったら誰とも繋がらなくてもいいや、と興味が薄れた。
髪の毛も随分、長いこと切っていないような気がする。
なにか理由があったような気がするけど、だれかにみてもらうとか。
単に切る機会がないだけなのだろう。
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「別れとかってのは一方的なものですよ」と今日、友達と話した。
そんなものなのかな、と思った。よく知らんけど。
勝手に始まって、勝手に終わったような気がする。
恋なんてものはそんなものなのかもね。空騒ぎするぐらいだし。
僕は本当に彼女が好きだったのか、恋に恋していたのか、
それとも別のなにかがあったのかはわからない。
でも確実に苦しくなったし、なにかを失った。
アルコールに頼るとか、死んでしまおうとか思ったけど、
それは単なる逃げで今は考える時間が必要なのだろう。
この世の中で、相手が自分のことを好きな確率は限りなく低く、
そのわりにカップルがたくさん居るのは、
人は自分のことを好きな人が好きだという一種のナルシズムを満たすから、
という益体もないことを考えてしまう。
それとも、生存本能がそうさせるのか、外的要因か。
基本的に男と女はつがいを必要としているのだろう。
そんなわけで、意外と彼女らしき存在で間に合ってしまうから、
お互いをよく理解しあわないで、すれ違ってしまうのかもしれない。
ただ、ほとんどの人は共通の価値観と規格内の行動原理がメディアによって
確立されているので噛み合ってしまったりもするのだろう。
本当はそんなことをちっとも信じていないけど、
こんなことをいっていないと納得も理解も感情も収拾付かない。
本当はもっと簡単で複雑な気持ちの問題なんだろう。
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「そんなのはよくある話で、多くの人はそれを乗り越えてるものさ」と姉が言った。
実際、姉がそんなこんなで乗り越えて結婚してたりもする。
世間一般的にみれば類型的な話はゴロゴロあるし、実際、身の回りにもいたりする。
でも、それは本人にしてみればよくある話と片付けられるものではないし、
そんな「みんなやってるからあなたもしなさい」的な発想は嫌いだ。
俺は俺だし、姉は姉だ。っは、といつものように鼻で笑うわけにもいかない。
足掻いて、足掻いて、足掻いて、悶えて、のた打ち回って、歯向かって、
抵抗して、格好悪くても縋ってみるのもありだと思う。
むしろそうしたい。そんだけ大切だったってことで、なにかに必死になることも
必要だと思う。本当に久しぶりの「どうでもよくないこと」だからね。
大概のことは「どうでもいい」と諦められる俺が、本気を出して、
引きとめようとしてるんだから。でも、その本気が逆効果になってしまうのも事実。
本当にどうしたらいいんだろうねまったく。
「来るものは拒まず、去るものは追い詰める」という性質の悪い性格を。
どうにかすべきだとおもう。
人の気持ちをどうこうしようってにはそれ相応の対価が必要で、
感情に感情をぶつけるのもまた駄目で、理性で行くと感情と対立して、
結局、袋小路に入ってしまう。
後悔がないようにやると、後悔する結果が待っている。
思えば、僕が彼女の意思を曲げることができたことは一度だってないんだ。
泣かれてもオロオロするばかりで、泣いたり笑ったり怒ったり喜んだり楽しんだり、
そういった彼女の感情表現で好きになって、振り回されて、
でも、楽しくて。僕の存在がどれほど彼女に影響したというのだろう。
結局、恋愛も一人芝居のようなものだったのかな。わからないや。
わかるのは誰かを好きになったということだけかな。
素直じゃないといわれても仕様がない。
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なんなんだろうね。理屈で割り切り始めてる。
あまりいい傾向ではないし、なんか駄目だと思う。自分に駄目出し。
もっといろんなことを一緒に経験したかったな。
できるといえばできるけど。やっぱ違うよね。
あーあ、大分、落ち着いてるよ。
もっと感情的になりたかったし、このフラストレーションをぶつけたい。
昔からの自分を押さえつける自制心のせいでいまいち発揮できないけど。
僕にとって彼女は本音で話せる相手だったのかもしれない。
何も隠さず、何も偽らず、騙ってもばれるし、僕よりも僕のことを知っていたし、
甘えだよね。彼女にとって僕は何だったのだろう。
すっかり別れを受け入れる雰囲気になってっけどさ、
わかれなくてもいいなら、わかれたくないよ。ほんとに。
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というわけで、今度は彼女に振り返ってもらえるように、いい男になります。
なりますという決意を固めました。
まあ、あれですよ、彼女もこの別れをポジティブに捉えてるとか言ってくれてる訳で、
いわれたこっちとしては酷く凹むというか、だめじゃん、俺って足枷だったの?的な
もうちょっと説明責任とかあるんじゃないのか?と思うわけで、
だったらこちらとしても受けてたとうじゃないかと、
無理やりにでもいい男になったねといわせてやると
開き直りの局地に立ちつつあるわけです。
これはもしかしてあれか、やけくそか?
そんなものはどっちでもいい。いい男になったモノ勝ちだ!という発想の転換が必要。
冒頭の髪の毛ももう、切る。とりあえず腹筋を割る。できることからはじめよう。
間違っている気もするが、最初の一歩を踏み出さないと駄目だ。
歯を食いしばって、胸を張って、顔をあげて、背筋を伸ばして、一歩を踏み出す。
座右の銘は威風堂々、質実剛健。漢になる。