兵士

砂浜で遊んでいると昔の兵隊の格好をした人が話しかけてきた。
「君、いま日本は平和かい?」「うん」そう応える。
「じゃあ、我々の死は無駄ではなかったのだね、よかった」
後ろを振り向くと、そこには砂浜だけが残っていた。
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たった、これだけの文章。いつどこでみただろう。何度も思い返す。
ああ、そうか。何度も思う。彼らは平和を望んで戦争をしたのだ。
日本を守るために、自分のいた世界を守るために戦ったのだ。
彼らで途絶えた血族も含めて、この世界を本当に守ろうとしたのだ。
その想いを考えただけで、嗚咽が漏れる。
僕はその想いに応えられるだけの生き方をしただろうか?
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「君が店長になったときに、どんな対応をするだろうね?」
いま、僕はそういう局面にいる。リーダーシップ論を学んで辿りついたのは、
リーダーの役割は次のリーダーを育てること。僕にはそれが出来ていない。
次の段階へ進むための局面。終わりが近づいている、そんな匂いがする。
この一年、様々な問題を乗り越えてきた。それは人との対立が主な課題で、
それらを全て乗り越えてきた。対話をしたから。
でも、対話が成立しない相手も、関係も存在することを思い知った。
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近いうちに僕は転勤をする。予感。現実に近い予感。
僕はこの店に何を残せただろう?僕はいい社員だっただろうか?
そして、多分、僕と先輩社員の転勤をきっかけに、店は変わる。これも予感。
変化の兆しはいくつも見える。そしていまは少しのきっかけを与えるだけで、
飽和したそれは破裂するだろう。表面化しない問題。僕達は仲がよい。
そう思っている。でも、それはいい結果を生み出さないこともある。
自惚れるわけでもなく、なんとなく思う。店は変化する。
いい意味でも悪い意味でも、その変化をきっかけに問題が噴出するだろう。
関係がないといえばそれまで、でも、関係がないわけがない。
関わってしまったのだから、見逃せるはずがない。どうすればいいだろう。
考えろ。