味の「コク」ってなんだ?

それは電車の中でのワンシーン。
僕と先輩は下北沢に向かう京王線の電車に乗っていた。
ふと、僕が吊り広告を眺めるとビールの宣伝文句が飛び込んできた。
「・・・世間一般の料理漫画やモノの本に登場する単語なんですがね。」
「ああ」
「ふとした疑問があります。」
「ああ」
「コクってなんでしょう?」
・・・そうして僕たちの議論は始まった。
冗談交じりの会話であったが要約すると以下の通り。
1.それは濃厚であることではないか
2.それは焦げている、苦味の一種ではないか
3.コクの対義語はすっきりしているではないか
4.それよりもキレのほうが謎ワードではないか
5.コクとキレがいわゆる対義語を形成しているだろう
6.キレには痛みなどの刺激が伴う
7.この世でもっともキレがあるのは炭酸水だと思う
・・・その後、僕たちの会話は明大前に着くと同時に途切れ、うやむやになった。
その後、検索した結果、以下のことがわかった。
「よくわからない」
これは矛盾しているように見えて、判らないことが判ったというだけで進歩だ。
しかし、これだけでは益体がないので、さらに検索をしてみる。
「科学的に分析すると、いろいろな核酸アミノ酸を多く含んでいると、コクが生まれるようである。」
「コクの要素として一般的に肉のゼラチン(加熱前はコラーゲン)やアミノ酸、野菜のカリウムなどがコクを生み出すと考えられている。」
「本場中国の料理人、フランスの料理人に対して、コクという言葉は通用しない。というより、コクに相当する言葉が適当なものがないからである。」
「コクとは単に濃厚というだけではなく、うま味、まろやかさ、豊かな深い味わいのこと。キレとは飲んだ後で口の中がザラザラした苦味や雑味が残らないことです。」
「苦味・酸味・甘味などが複雑に交じり合いうまくバランスのとれた深い味わいの旨味のこと」
以上の事柄から考察するに、コクとは味の事を指していないのではないかと思う。
中国、フランスにそれを指す単語がないことからも察せられる。
単純に甘・辛・酸・苦・鹹・旨に分類されるものではなく、
またこの6種の味覚に加えられるものでもない。
即ち、状況全体を複合的綜合的に分析した結果がコクであると考えられる。
もしくは複数の味の差異が生み出す空白部分を脳が捉え、伝えるのがコクである。
味の調和こそがコクだと僕は判断した。
敢えてそれを味覚で表現するなら不味もしくは美味であるとも思う。
思えば、不味い美味いというけれども、この味覚では表現しにくいものだ。
例えば塩が強すぎればしょっぱいなどとの表現ができる。
しょっぱいは不味いの一端に数えられると思うが、
これは塩味が強すぎて、味の調和が取れていないことに
由来するのではないだろうか?
皆さんはいかが考えるだろう?