正しい恋の保存法

♂「名前を付けて保存」
♀「上書き保存」
とあるサイトの恋人との思い出についてのコメントでし。
あー、なるほどねーと思ってしまった。
ところで、彼女はあの指輪をまだ持っていたみたいです。
大切にしてね。
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「なぁ、渡辺さん」「なんだい、いちっきー」とある職場での風景。
「高橋は、嫉妬故に仕事を辞めると言うのだが、どう思う?」
バイト内で付き合って、男がひどく嫉妬深く、喧嘩の末に職務放棄をした結果だ。
「嫉妬できる相手が居て羨ましい」御尤も。それが正しい。
「俺も嫉妬とかしてー」「嫉妬はしないと思うが羨ましいのは確かだね」
「バリ島でのアバンチュールはなかったのかい?」「売ってたけどねー。」
「どきどきしたいなぁ」「ねー」
今日も夜は更けていく。
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「付き合ってもいないのに、嫉妬されて困った」
これはこの間の休日の風景。
「『そういうことはしないで欲しい』って言われても関係ないのにね」
「あー・・・」身に覚えがある。小学生の頃に誰かに言った様な気もする。
「変なの」「変でしょ」と楽しそうに笑う。「イチキ君はほんとに嫉妬しないの?」
以前から何度かその話をしているような気がする。
僕と彼女の関係に変化がないのなら、それは認識の外のことであるし、
状況に変化がない。それは僕には関係がないことなのだという考えから、
実体験に基づいて嫉妬をしないという結論にいたる。
あれは、もしかしたら彼女のことを信じていたし、
彼女も僕を信じていたからなのかもしれない。強い信頼があったから。
「どうだろうね、友人とかに恋人が出来ると変な気分になる」
「それは嫉妬だね」「嫉妬かー・・・SHIT!」
なぜだろう、それは友人の恋人に対してなのか、対象に僕が含まれていないからなのか、
何故か負けたような、寂しいような、どうでもいいような、変な気分になる。
素直に祝福できないこの複雑な気持ちが、嫉妬というものだろうか?
それとも単純に羨望なのだろうか?僕にも仲睦まじい恋人がいたらなぁという。
それとも、その友人のことが好きなのだろうか?
「どう思う?」「イチキ君はみんな好きだもんね」「うん、大好き。君も好きだよ」
「もは余計だよ」そんなもんさ。「好きな人がたくさんいるのは幸せなことだよ?」
「それは、みんな特別じゃなからでしょ。」・・・本当によくわかるね。
「特別だけが幸せではないと思うけどね」サーモンのユッケを食べながら強がってみる。
「それだけが幸せではないけど、幸せの範疇に入ってるね」
「っは、たしかし。」醤油で口がかぶれてきたので箸を置く。
「・・・ホントはいつも誰かの特別に、一番になりたいのにね。」と
口から本音がこぼれてしまう。だからみんな好き。
そうすることで、いつか誰かの特別になれると思っているから。
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「ねえ、ほんとに彼女のこと好きだったの?」
これもどこかの日常。
「・・・彼女は僕の人生で初めて、僕が一番好きだといってくれた人だったからね。
だから、好きになりたいと願ったんだよ。それをひどく今まで望んでいたからさ。」
「それは好きじゃないってこと?」「どうだろうね?わからないや」と
わからないことをわからないと説明する事で状況を説明するテクニックを使う。
・・・本当にわからないのだけどね。
「でもさ、魔法はいつか解けてしまうんだよね」「は?」うん、いい反応だ。
「彼女がぼくのことを好きなのは、きっと魔法のせいだとずっと思ってた。
怖かった。『君に掛かった魔法が解けなければいいのに』と何度言ったろう?
『この気持ちは魔法じゃないからとけないよ』といっていたけれど、ね。」
「・・・でも、魔法は消えてなくなってしまいましたとさ。呪いを残してね。」
それが思い出という名前の呪縛。心が囚われてしまう。
「上書き保存できればいいのにね。」「したくないでしょ?」
「・・・うん、ほんとはずっと大切にしたいよ。」
「素直じゃないねー」「正直なだけさ」「馬鹿だね」「馬鹿だよ」
「新しい恋はしないの?」「暫くはいいかなって思ってる。」
「でも、惚れっぽいよねー」「そだね、でも、憧れなのかなぁとも思う。」
「ふーん」
それは、理想を投影しているだけなのかもしれない。
理想の女性の原型は、誰の中にも欠片が埋まっているから、
それを見つけては拡大する。そやっていくうちに盲目になる。
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